近年、販促のツールとして注目を集めているのが「Beacon(ビーコン)」のアプリです。
位置情報を特定する機能を持つビーコンですが、海外ではApple社、日本ではインターネットサービスの大手のLINE株式会社が参入してから積極的に活用されています。
O2Oマーケティングでの活用も注目されているビーコンは具体的にどんな効果があるかご存知ですか?
そこで今回は今後もさらに波及していくことが考えられるビーコンについてその機能と種類や価格、活用方法やメリットをご紹介します。
よりイメージしやすいように実際の海外と庫内での活用事例も交えているのでぜひビーコンの導入を検討する際には参考にしてみてください。
ビーコンの仕組みと種類
ビーコン(Beacon)の本来の意味は「狼煙(のろし)」で、現在では位置などの情報を伝達できるツールとして認識されています。
そこから無線の技術を利用して信号をやり取りする仕組み考え出され、電波を用いて位置を特定することのできる技術が生まれました。
ビーコンの仕組み
仕組みとしては、ビーコンが発信した信号をスマホがキャッチすると、位置や端末の情報がインターネット上のサーバーに送られます。
さらにアプリのプッシュ通知と組み合わせれば、企業から顧客に知らせたい情報を送れるので、いわば企業と顧客がコミュニケーションを取るきっかけになるのです。
こうした機能はスマホ以外でもBluetoothを受信できる端末があれば利用可能。
例えば2016年に一大ブームとなったPokemon GO用のウエアラブル端末「Pokemon GO Plus」はビーコンとのやり取りによって、スマホを見ていなくてもイベントの発生に気づける仕組みです。
しかしBluetoothはバッテリーの消耗が激しいのが難点です。
この対策のためにビーコン用の端末では「BLE(Bluetooth Low Energy)」という規格を用いて消費電力を抑え、ボタン電池でも長期間稼働できるように工夫されています。
ビーコンの種類と金額
一口に「ビーコン」と言っても、その種類は様々です。
例えば道路上のビーコンは赤外線や電波を発射して車の流れを把握しますが、登山者が携帯するビーコンは雪崩が発生すると、雪に埋もれても電波を発信して居場所を教えてくれます。
電波を使用しなくてもHTMLメールに埋め込んで受信者の行動を監視できるWebビーコンもあります。
スマホで使えるビーコンはBluetoothの信号を利用しています。
かつてはBluetoothの機能をONにしないとビーコンを受信できませんでしたが、2013年にAppleが「iBeacon」という無線通信技術を採用したことで急速に普及しました。
ビーコンの値段に関しても幅広いといえます。
最も小さいタグやボタン型であれば2,000~3,000円程度で、般的な据置型やUSB接続型になると3,000~5,000円くらいで購入できます。
さらに防水防塵だと5,000~10,000円くらい、ソーラーシステムが備わっていると10,000~20,000円など、屋外向けの端末になるほど価格は高くなります。
多機能との使い分け
他にも位置情報を伝達できるツールとしてGPSやWi-Fiがあり、どちらもスマホに標準で搭載されている
機能です。
それぞれ特徴があるのでしっかり使い分けることが大切です。
ビーコン
ビーコンは他のツールよりも信号を送れる範囲が狭く、端末の大きさにもよりますが数センチから数十センチ程度です。
その代わり精度が高く、屋内や地下など他の信号が届きづらい場所でも問題なく利用できます。
またBLEによって電力の消費が抑えられ、信号
同士の干渉が少ないのもメリットです。
GPS
GPSは位置の測定に人工衛星を利用している特性上、信号の届く範囲が広いため、精度は今一つです。
またビーコンに比べて信号を受け取る端末
のバッテリー消費が激しいという欠点もあります。
WI-FI
そしてWi-Fiは信号を受信したアクセスポイン
トの位置までは分かりますが、それ以上の精度はあまり期待できません。
電波の強弱を調節できないので、狭い範囲で複数のWi-Fiを利用すると信号が干渉して動作が不安定になる恐れがあります。
以上のことから建物内や地下など限られた範囲で情報をやり取りするのであればビーコンが適しているといえるでしょう。
ビーコンの信号を発信する端末は用途に合わせて様々な種類があり、それぞれ消費電力やBluetoothの届く範囲などが異なります。
ビーコンのなかでも特徴や性能を考えて選んでいくことが重要です。
ビーコン導入のメリット
ではビーコンを導入すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。
企業側と顧客側、それぞれについて紹介します。
企業側のメリット
ビーコンはスマホの位置を取得できるので、IoTの一環として店内やイベントスペースに複数の端末を設置すれば、顧客がどのように行動したか意識させずに把握できます。
その情報に基づいてレイアウトを変えるなど効果的な誘導や販促が可能です。
さらにスマホのアプリと組み合わせれば、顧客がインストールするとビーコンを受信するたびに必要な情報を通知できるので、例えばその日のセールなど最新情報や、その場所ならではの音声ガイドのほかに実店舗や観光地のチェックイン、スタンプラリーにも活用できます。
顧客の情報が蓄積されれば、より効果的な広告を配信できるでしょう
顧客側のメリット
顧客は企業が提供するアプリをスマホにインストールすると、ビーコンの信号を受信した時にお得なクーポンや割引券がプッシュ通知で送られてきます。
また、水族館や美術館などその場所で必要な情報も簡単に入手できます。
いずれも他の方法で提供されていたサービスですが、ビーコンなら顧客にベストなタイミングで通知できるのがメリットです。
他にもスマホで利用できるビーコンは信号を受信すると顧客の位置情報が取得され、代わりに企業から必要な情報が届けられます。
GPSやWi-Fiよりも精度が高く、導入するだけなら費用も手頃です。
ただし無闇に情報を送りつけてしまうと、顧客から通信を切られてしまうので導入にあたっては、本当に顧客が必要とする情報を提供するようにしたいものです
ビーコン活用の事例~国内編~
それではここからは、ビーコンがどのように活用されているのか、実際の事例を見ていきましょう。
仕組みからも分かるとおり、ビーコンを活用するにはスマートフォンのユーザーがBluetoothをONにしており、なおかつ専用アプリをインストールしていなければいけません。
特に後者はハードルが高く、販促担当者にとっては悩みどころです。
そこで誰でもすでにインストールしているようなアプリと連携すれば、わざわざ専用アプリを作らなくても届けたい情報を送れます。
LINE株式会社「LINE Beacon」
2015年9月に、LINE株式会社はSNSアプリ「LINE」に「LINE Beacon」という機能を搭載しました。
BluetoothをONにして、LINEのプライバシー管理でLINE BeaconをONにすると、ビーコン端末の近くに来たときに情報が送られてくるようになります。
プッシュ通知が来て「トーク」を開くと、画面の上部に緑色のバーが表示されているはずです。
認証に同意して友だち追加すると内容を確認できます。
LINEはメールよりも使いやすい連絡手段として、日本ではスマートフォンユーザーの70%以上がインストールしています。
これまで今一つ活用しきれなかったビーコンもLINEの搭載によって普及していきそうです。
主な事例を紹介していきます。
スタートトゥデイ×LINEの連携
アパレルブランド「スタートトゥデイ」とボタン型ビーコン端末を活用したサービスがあります。
これは来店したユーザーが商品に取り付けられているビーコン端末のボタンを押すと、LINE上で商品情報が表示される仕組みです。
ユニクロ×LINEの連携
同じくファストファッションのブランド「ユニクロ」では実店舗への入退店時に、その店舗ごとのお得情報や売筋商品を紹介してくれます。
キリン×LINEの連携
飲料メーカーの「キリン」では自動販売機にビーコン端末を搭載し、ユーザーが購入時にLINEの画面を向けるとドリンクポイントが貯まる仕組みを作りました。
トーハン×LINEの連携
過去には出版取次業者のトーハンが書店にLINEキャラクター型のビーコン端末を設置して、LINEマンガの試し読みができるキャンペーンを実施しました。
ビーコン活用の事例~海外編~
一方、海外では先立ってビーコンを導入したApple社の「iBeacon」を活用した事例が豊富です。
事例を見ていきましょう。
メジャーリーグ|アメリカ
アメリカの「MLB(メジャリーグ・ベースボール)」では、MLB.com Ballparkという専用アプリがあります。
20以上のスタジアムに各100個のビーコン端末を設置されています。
取得したチケット情報を元に座席まで案内してくれたり、屋台のおすすめ商品を教えてくれたりするのです。
ルーベンスの家|ベルギー
展示施設ではベルギーのアントワープにある「ルーベンスの家」で面白い取り組みが行われています。
専用のアプリをインストールすると、現在地の過去の画像や絵画のX線像を見ることができます。
さらに、スタンプラリーやクイズもできて飽きることがありません。
フロアガイド代わりにもなるので、訪れた人に利用されています。
Travel Radar|ドイツ
ドイツ生まれの「Travel Radar」は空港内で自分の荷物の位置が分かるアプリです。
荷物にiBeacon対応の端末を入れてアプリに端末の情報を入力すると、手元に届いたときプッシュ通知が送られます。
荷物のピックアップが楽になるので、どんどん導入が進みそうですね。
まとめ
事例を見ると、日本でも海外でも大手で誰もが使うOSやアプリがビーコンを採用したことで活用範囲が広がり始めています。
特に誰でもすでにインストールしているようなアプリと連携すれば、専用アプリをインストールしてもらう手間を省けるので導入が簡単です。
今後も普及するにつれて集客やガイド以外の新たな使い方も登場するでしょう。
この記事がお役に立てば幸いです。